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俺は早速、基本になる魔方陣を描く。地面に描かれた複雑な線の集合体は、不思議な力を感じさせる。
本を読みながら、手順通りに作業を進めていった。出来上がったのは、予想よりも遥かに大きな魔方陣だった。それを眺めながら、自嘲気味に笑う。やはり、俺程度の実力ではこれが限界だ。
意を決して魔方陣の端に手を置き、目一杯の魔力を叩き込む。
すると、魔方陣が光り出して、それが俺の体に浸透してくる。温かい、久しぶりともいえる普通の感覚に、俺は身震いした。なれていないから、若干の恐怖がある。
早く行動しないと、使用人が来てしまう。
俺は口元に笑みを浮かべ、立ち上がった。骨が鋭い音を鳴らす。身体中から血が溢れ、俺は軽い目眩をおこした。
忘れていた。この魔法は、決して傷を治す部類の魔法ではない。あくまで、麻痺させる麻酔のような役割だ。慎重に行動しないと、体が動かなくなってしまう。
風呂場にゆっくりと歩き、なるべく負担をかけないように、座り込んだ。これからどうするかが問題になる。ベストなのが、敷地内の誰にも知られない場所に一時的でも放置。使用人が来た後に、この死体を埋めるというのがいい。
冷静になった思考で考えても、それ以上の事は浮かばなかった。俺は頭が良いとはいえない。どちらかというと、悪い方だ。だから、できる事を精一杯やるさ。
やってしまったものは仕方ないんだ。これからの事を考え、行動しなければ。そうしなければ俺は死に逝くだけだ。
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