隠蔽

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 コールの死体を一瞥する。ぐちゃぐちゃにされ、なんとも哀れな光景だ。滑稽なその姿に、喉から笑いが込み上げてきた。 「ククク……」  それは次第に大きくなり、腹からの笑いに姿を変えた。 「ハハハハハハ!」  哀れだ。滑稽だ。  言い知れない快感に、俺は身を委ねる。  だが、いつまでもそうはしていられない。  瞬間、俺は頭の中が真っ白になった。誰かが歩いてくる足音が、外から聞こえてきたのだ。  意味もなく息をひそめ、俺はコールの死体を急いで浴槽の中に隠した。体が悲鳴を上げていたが、そんな事はかまっていられない。  風呂場を出て、本棚から適当な本を出す。それはベッドに投げて、俺もベッドに向かった。  その時、扉から二回、ノックの音が聞こえてきた。 「入るわよ」  それは忌み嫌う、妹の声だった。
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