虐待

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 その時、ドアが開く音が聞こえた。同時に俺は心臓が跳ねる。また、今から最悪の時間が始まると思ったらゾッとなった。  おそらく使用人だろう。一日に三回、朝昼晩と食事を運んでくる使用人がいて、三回ともに違う使用人がくる。  朝と夜の使用人は、俺に侮蔑の言葉と視線を浴びせるだけだ。それならまだいい。夜は俺に侮蔑の言葉と、怒りのこもった拳を振り上げる。  使用人としては失格だが、俺はそういう立場にいるから仕方がない。日々募った怒りを俺にぶつけ、俺をストレス発散の道具としている。  最悪。そいつに逆らった事はあるが、ここの使用人はガードの意味も込めて雇っているので、はっきりいって暴力なら絶対に勝てない。  俺はげんなりしながらドアを開け、相手の姿を確認する。狡猾そうな目はいつものことで、ボサボサの黒髪。メガネをかけて、さらにそのいやらしそうな目が強調されている。俺より少し高い身長の180で、大柄の男。  こいつが、いつも俺に最悪な時間を与える主だ。確か、名前はコールとか言った。 「それ、ルキお坊ちゃん。飯だぞ」  それが合図のようなものだ。ここからの流れはもう分かっている。  俺はトレイに乗せている昼食を取りに行こうと、そいつに近づく。  コールは受け取ろうとする俺の手を全力ではたく。見ると、手がじんじんし、赤く変色していた。 「まだだって、いつもの儀式してからじゃないと、飯は渡せないよー」  間延びしたコールの声が、狭い小屋の中に静かに響いた。
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