隠蔽

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 肉と骨、その他もろもろの塊がそこにはあった。  まさに、死人。死んでいるかはきちんと脈をとって確認した。  頭がガンガンと痛み、目がチカチカと落ち着かない。全身に鋭い痛みが走り、胃から何かが込み上げてくる。俺は最悪状態の体を引きずり、トイレの便器に向かった。  そこで、口に手を入れて、無理やりにでも吐く。そうしなければ冷静になれない気がしたし、すっきりするから。口の中は少し酸っぱい胃液の味と、血の味が混ざり合い、それがまた吐き気を催す材料となった。  また吐くのはごめんだから、俺は横を見る。そこには頭から血を流し、目を見開いているコールがいた。  それを確認した俺は、頭の中でこれからどうするかを冷静に考える。  だが、心はそれを許さないとばかりに、暴れ出す。歓喜と恐怖、爽快感と嫌悪感が心臓の中で、容赦なく俺の深い場所を抉る。  とりあえず、それをおさめる為に俺はコールに近づいた。思い切り体重もかけて踏みつける。足が柔らかい臓器と、固い骨を潰す鈍い音が風呂場に響いた。  心で暴れていたものはなくなったが、それと引き換えに出てきたのが、快感。性的でもなく、欲望を満たした時に現れる快感でもない、本能で感じとるようなとても甘美な快感。  それをどんどん俺の体を支配していき、目の前に倒れるコールを壊していった。  潰し、抉り、俺は思い付く限りの破壊方法を駆使して、コールの死体を壊した。後に残るのは、元が人間だとかろうじて分かる、ぐしゃぐしゃの物体。  普通の人間が見れば、嫌悪感や吐き気を催すだろうが、俺はそれをとても美しい芸術品のように見えた。  このままじゃいけない、と思った俺は自分の体を強く抱き締めた。内側から抑えられる自信のない故の行動だ。  外部から何か刺激を与えなければいけない。  俺は自分の指を目の前に持っていき、小指を本来曲がらない方向に曲げた。鈍い痛みが脳を支配し、それまであった痛みも忘れ、俺は指を押さえながら座り込んだ。
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