虚空の中の少年 美月side

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お昼は、あたし達は雨の日以外はいつも屋上で過ごしている。 今の時期は、ぽかぽかとした陽気がとても気持ち良い。 桜が下に見えるので、ちょっとしたお花見気分も味わえる。 高校一年生のあたしは他の季節の事までは分からないが、春は屋上でお昼を過ごすに限る。 屋上に着くと、茜と夕葵が少し驚いた表情をした。 「あれっ?横にいるのって御堂君ですか?」 「うん。連れて来たの」 「超強引にな」 「陽哉は黙って!」 そんなやり取りを、唖然としながら見ている宙に夕葵は微笑む。 「私は榎本 夕葵(エノモト ユキ)。御堂君と同じクラスです。よろしくお願いしますね?」 「……っ!えっと……あの……はい……」 宙は頬を少し赤くすると、夕葵から慌てて目を反らした。 流石だな……夕葵。 可愛らしい端正な顔に細やかな白い肌。 ぱっちりとした焦げ茶色の瞳にふわふわとした柔らかな髪。 女のあたしから見ても、可愛いとしか言えないもんな……。 いくら無表情装った御堂君でも、こんな可愛い子に微笑みかけられればそりゃ照れるよ。 美月はクスクスと笑うと、その場に腰を下ろした。 「じゃ、お昼にしましょ?」
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