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「それにしても、ここの桜は綺麗だな」
「うん、そうだね……。四月だったら屋台とか出てたかもね」
「だな。もう少し早くこっちに来られればなー……」
本気で悔しそうに短髪の髪を掻き毟る蒔希を見、宙は思わず苦笑いをした。
「仕方ないよ。こればっかりは」
和やかな時間を過ごしていると、後ろがらザッザッと誰かの走る音が聞こえてくる。
二人は反射的に端に寄った。
その横を、ポニーテールの少女が駆け抜ける。
その少女から、何故か宙は目を離せなかった。
桜の花弁の中を走り抜ける少女は酷く幻想的で。
そして、強いエネルギーを振りまいているようだった。
後ろ姿をただぼんやりと眺めていると、横から感嘆する声が聞こえてきた。
「朝っぱらから元気だなー……。俺、絶対無理。都会の子はエネルギッシュなんだな」
「兄さん、おじさん臭いよ」
「高校生から見たら、俺の年代なんてオッサンみたいなもんだろ?」
「オッサンって……。兄さんまだ大学生卒業したばっかりじゃん……」
クスクスと笑いながら、宙は正面に視線を向けた。
あの少女を追うかのように。
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