14人が本棚に入れています
本棚に追加
今日、あたしの通う学校に転校生がやって来た。
思わず撫でたくなるような、ふわふわとした癖のある真っ黒な髪に、宝石のように輝く漆黒の瞳。
それとは対照的に、肌は透けるように白く、卵形の顔は両手で包みこめそうな程小さい。
身長はお世辞にも高いとは言えないが、それが可愛らしい、人懐っこい小動物のようなイメージを彷彿させる。
それが彼の第一印象。
だけど、彼は決してただ愛らしい存在である訳じゃないように思う。
あたしには、彼の中に深い絶望があるように感じるのだ。
彼の瞳はハッする程冷たく、全くと言っていい程、感情の色彩がみられない。
無機質で、まるで等身大の人形のようだ。
そんな冷ややかな瞳で、彼は何を見、考えているのだろう?
あたしは、そんな彼の見ている世界を知りたいと思う。
そして理解したい。
五月十二日、月曜日。
今日が記念すべき邂逅の日。
そして、今日が全ての始まりの日。
最初のコメントを投稿しよう!