虚空の中の少年 美月side

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まだ少し肌寒さを残す五月の朝。学校の校庭では、運動部員達が朝練に励んでいた。 パスを繰り返しする者、曲に合わせバトンを投げる者、シャトルの打ち合いをする者――…。 松永 美月(マツナガ ミヅキ)もその内の一人である。 「美月!スタートもう一回やってみて」 「はいっ!先輩!」 元気良く返事をし、軽く走りながらスタートラインまで戻る。 指定位置に着くと、美月は横に立つ、一つ上の先輩に視線を向けた。 先輩はこくりと頷き、口元へ笛を持っていく。 「準備はいい?じゃ、いくよ!5、4、3………」 先輩がそう言った数秒後、ピーという高い音が校庭に響く。 美月は笛の鳴りだすタイミングに合わせ脚を踏み出し、そして駆け出した。 風を切るようにして数十メートル全力で走り、途中たたらを踏みながら止まると、勢いよく後ろを振り返る。
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