虚空の中の少年 美月side

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担任が退出した刹那、宙を取り囲むようにして人集りが出来る。 「何で転校してきたの?」 「御堂って、今どこに住んでるんだ?」 「ねえねえ、彼女いる?」 「放課後にでも学校、案内してやろうか?」 「…………」 宙はどの質問にも返答する事なく、何が面白いのか外の景色ばかり見続けている。 暫らくすると、質問責めしていた生徒達も何のリアクションも取らない宙に飽きたのか、次第に自分達の席に戻っていく。 「あれってヤバいよね……。そのうちイジメとか起きそう……」 声のする方を見上げると、友人の宮崎 茜(ミヤザキ アカネ)が暗い表情で宙を見つめていた。 茶色に近い瞳。 その目は今、不安や心配の念が見え隠れしている。 茜は短めの先の跳ねたセミロングを揺らし、美月の机に寄り掛かった。 ――確かに、このままじゃクラスに馴染めないだろうな……。 数分前とは打って変わったように人気のない後ろの席をガラス越しに眺め、漠然と思う。 しかし、美月や茜の心配など余所に、宙はただただぼんやりと、窓の外を注視し続けていた。
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