第九章 直樹の夢

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   アミューズメントビルを出て、駅へと歩き出した。ちひろは、少し遅れてついてきている。  遅れてついてくるというより、歩くのが遅くてオレからどんどん離れていく。  それが、まだ離れたくないという、ちひろのアピールなのだろう。 「あのさ直樹、部屋に来てよ。それで明日は、ちひろの部屋から出勤すればいいじゃん」  遅れて歩いてたのは、それを考えていたんだろうな。  気持ちは分かるんだけど、オレの事情もあった。明日、仕事で使う資料を取りに帰らなきゃならない。  それを、ちひろに伝える。  結局、オレはちひろのアパートの部屋にいた。  一度ちひろと別れてから家に帰って、資料を取って明日の着替えなんかも持ってアパートに来たのだ。  何故だか今日はそうしたかったし、そうすべきだと思い行動した。 「直樹、怒ってない?」 「何でだよ、怒ってなんかないよ。どうして、そんな事を言い出すんだよ」 「だって、ワガママ言ったから……」  そのワガママを聞いた理由は、12月に会える時間を作れる自信があまり無いから。  そして、二人の時間を共有する方法がまったく思い付かず、自分への言い訳の部分でもあった。  まぁ、ごちゃごちゃと言ってみても、単純にちひろと一緒にいたいだけなんだ。 「なら、良いんだけどね」  そう言ったちひろは、嬉しそうな笑みを浮かべてる。  どうしたら、いいんだろう……  隣でちひろが寝息をたててる横で、眠れずにそればかりを考えていた。  仕事を辞めて【スターダスト】のボーイになる。そうすれば、ちひろといる時間は圧倒的に増えるだろう。  それは別の問題が出来て、ちひろと別れる事になる気がする。常時、ちひろが他の男と接しているのを、正気で見ていられる自信はない。  ちひろだって、気分よく働けないだろうしな。    
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