第九章 直樹の夢

15/53
2966人が本棚に入れています
本棚に追加
/690ページ
   ダーツボードの真ん中を、ブルと言うそうだが先にブルに入れたのは、ちひろの方だった。  それは、やはり悔しい。 「はあ、疲れたねぇ」  立て続けに10ゲームほどやったので、流石に疲れて休憩する事にした。  ダーツ台につき、テーブルが1つありそこに座り、酒が飲めるみたいなので二人でビールを注文した。  真っ昼間からビール飲んで、ダーツ投げてるカップルってどうなんだ。    軽いツマミと一緒にビールを飲みながら、話しは来月の事になった。  どんな話しをしたって、ちひろとオレの時間の絶対量は変わらない。去年のように、一緒にいられる時間は無いだろうな。  ヘタをすれば、回数で2、3回しか会えないかもしれない。 「何とか時間は作るよ」  ちひろにも、そうとしか言えなかった。 「よし、来月のことは来月になってから考える事にしようよ。とりあえず、もう一度ダーツしようか」  本当にちひろは、ダーツが気に入ったようだ。ボードに矢が刺さるたびに、喜んだり落ち込んだり表情をコロコロ変える。  特に、喜んでいる時のちひろは可愛い。こんな時間の共有を、オレの心は望んでいる。  何か、方法は無いんだろうか。  ユカちゃんの夢がダンスならば、オレの夢はちひろと時間の共有。その方法は、分からないけど考えてみる事にしよう。  結局、ダーツを3時間半はやっていた。  携帯を見ると液晶画面にちひろの笑顔と、6時40分の表示がある。ついに、待受画面にもちひろの笑顔を持ってきた。  ちょっと、やりすぎかな。 「ちひろ、そろそろ帰ろうか? オレも、出張の荷物とか片付けに帰りたいし」 「そうだよね……」  ちひろが、寂しそうな表情を見せる。来月の事も頭の中でリンクさせて、寂しさを強めてそんな顔をしてるように感じた。  それは、考えすぎかもしれないけど。    
/690ページ

最初のコメントを投稿しよう!