第九章 直樹の夢

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   気が付いた時には、朝になっていた。  考え事しながら寝たせいで、熟睡出来なんて出来ているはずもない。どこか、身体が重くて疲れが抜けていない、そんな感覚が全身を包み込んでいる。  ちひろは、隣で爆睡中だ。 「オレより先に寝たよな……」  もしも結婚したとしても、ちひろに起こしてもらうなんて夢のまた夢だろうな。  だるい身体を持ち上げて、顔を洗いキッキンへと立った。 「こんなんは何度かあったけど、立場が逆にならないかなぁ」  ボヤキとも愚痴ともつかない、空しい独り言をポツリと吐いて、食材のチェックをして朝食を作ることにした。  フレンチトーストにベーコンエッグ、サラダにオニオンスープを作り、テーブルに並べてみた。  そろそろだろうな。 「あぁ、いい匂いぃ」  半分寝惚けた声でそう言ってから、ちひろはベッドの上で身体を起こしてきた。  寝癖が、お茶目と言えばお茶目だな。 「おはよう、直樹。また、ごはん作って貰っちゃったね」 「いいよ、いつもの事だろ」 「ぶぅ、何だか嫌味を言われてる気分だよ。ちひろ、いじめられて悲しいよ」  ワザとらしい、オーバーアクションは茶目っ気がたっぷりで、怒る気分など少しもおきてこない。  こんな生活も、いいかもしれないな。  そんな思いは周囲からの口撃もあって、最近は「結婚」って言葉に意識が向かうようになっていた。  ちひろとの、新婚生活を今の状態に置き換えると、幸せな気分になってくるし近い将来に、真剣に考えるべき問題なのだと思った。  オレの夢。  ちひろとの、幸せな結婚生活。それは、夢と言って良いのか。  夢なんて、遠い話しではないよな。 「ごちそうさまぁ。今日も、美味しかったねぇ」  朝食を終えて、時計を見ると結構ギリギリの時間だった。    
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