2966人が本棚に入れています
本棚に追加
/690ページ
気が付いた時には、朝になっていた。
考え事しながら寝たせいで、熟睡出来なんて出来ているはずもない。どこか、身体が重くて疲れが抜けていない、そんな感覚が全身を包み込んでいる。
ちひろは、隣で爆睡中だ。
「オレより先に寝たよな……」
もしも結婚したとしても、ちひろに起こしてもらうなんて夢のまた夢だろうな。
だるい身体を持ち上げて、顔を洗いキッキンへと立った。
「こんなんは何度かあったけど、立場が逆にならないかなぁ」
ボヤキとも愚痴ともつかない、空しい独り言をポツリと吐いて、食材のチェックをして朝食を作ることにした。
フレンチトーストにベーコンエッグ、サラダにオニオンスープを作り、テーブルに並べてみた。
そろそろだろうな。
「あぁ、いい匂いぃ」
半分寝惚けた声でそう言ってから、ちひろはベッドの上で身体を起こしてきた。
寝癖が、お茶目と言えばお茶目だな。
「おはよう、直樹。また、ごはん作って貰っちゃったね」
「いいよ、いつもの事だろ」
「ぶぅ、何だか嫌味を言われてる気分だよ。ちひろ、いじめられて悲しいよ」
ワザとらしい、オーバーアクションは茶目っ気がたっぷりで、怒る気分など少しもおきてこない。
こんな生活も、いいかもしれないな。
そんな思いは周囲からの口撃もあって、最近は「結婚」って言葉に意識が向かうようになっていた。
ちひろとの、新婚生活を今の状態に置き換えると、幸せな気分になってくるし近い将来に、真剣に考えるべき問題なのだと思った。
オレの夢。
ちひろとの、幸せな結婚生活。それは、夢と言って良いのか。
夢なんて、遠い話しではないよな。
「ごちそうさまぁ。今日も、美味しかったねぇ」
朝食を終えて、時計を見ると結構ギリギリの時間だった。
最初のコメントを投稿しよう!