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「まぁ、乗れよ」
真田さんは、後ろに荷物を放り込むと、右側にある助手席(外車の為、左ハンドル)を開けてくれた。
そんな大人な所作に、驚きも感じるけど
「うー……」
躊躇いも感じる。
「何してんだ?早く乗れ」
車の前で、唸る私を不審に思ったのか、真田さんは、私の背中を軽く叩いて、催促する。
「だって!汚したらどーすんですか!こんな高級車怖くて、乗れないし……」
美しい銀の塗装は傷一つ無い。私の貧相な姿なんか、写していいのか躊躇われる程。
その時だった。
私のすぐ後ろで、何かがぶつかる音がした。
「??!」
慌てて振り返った私は、信じられない物を見た。
真田さんは自分の愛車を足でその嫌みなほど長い足で蹴っていた。
「何してんですか!!?」
私は、足が退けられた後の部分を思わず、撫でる。
「別に車は汚れるもんだ。傷も、つけまいと思えどついてしまう。だから、お前が気にする事じゃないし、俺も気にしない。……だから、乗れよ」
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