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幾分落ち着いた心。
こんなにも、人がいるという事だけで違うものか、と自分の単純さに若干呆れてしまう。
「……お前さ、ちゃんと自分の意見言った方がいいぞ」
もう寝ている、と思っていたのに、隣りから突如声がして、私は返事になってない、素っ頓狂な声を上げた。
それでもお構いなしに、真田は続ける。
「良いか?わがままってのはな、かけ過ぎぐらいが良いんだよ。特に、お前みたいな女は……」
「はぇ?」
「だから、遠慮しなくとも良いんだよ。……寂しい時はそう言えっての。親と家と、同時に離れてんだから寂しいなんて、当たり前だろ」
わかったか?と、優しい声で咎められる。あまりに優しい声だったから、私は素直に頷いていた。
「なら良し。あ、寂しいなら抱いて寝てやろうか?」
慣れてきた視線の先に、手を伸ばしている真田を見た。
「結構です!」
きっぱりお断りすれば、乾いた笑い声が聞こえた。随分と長く笑いが続いたようだったが、落ち着いたようだ、部屋に静けさが戻った。
「じゃ、オヤスミ」
「……お休みなさい」
その数分後、穏やかな寝息が聞こえてきた。この人、実は本当は優しいんだ。私の事、ちゃんと考えてくれてる……。それに、さっきの言い方だって……。嬉しい……。
ありがとうの、言葉はちゃんと口に出来ていたか分からないけど、私もすぐに穏やかな眠りに落ちた事は確かだった。
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