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ゆっくりと俺は努杜を抱き上げた。
起こさないように、と細心の注意を払おうと思ってみたが、こいつはあれだけ揺すっても眉しか動かさなかった女だ。起きないだろう。
案の定ドアに足をぶつけてしまったが、起きなかった。
結構派手にぶつけてしまったな。
こりゃ、明日青じみになるな。
ベッドに寝かせ、足に目を向けた。ま、仕方ないな。発見して、どこでぶつけたのか分からず悩むこいつを見るのも面白い。
安易に想像出来る少し先の未来に、俺は小さく笑った。
そして、ちゃんと枕が頭の下にあることを確認すると、俺も隣りに寝転んだ。
足元の布団を2人にかける。
ベッドサイドの灯りをすこし暗くし、俺は天井を見上げた。
きっと、先ほどの「感情」に、俺は気付きたくないんだ。
蓋をしたい。
だってもし開けて、もう二度と蓋が出来なくなったら……
「そんなの、お前がかわいそうだ」
寝返りをうてば、目の前に現れる寝顔。
俺は無意識に手を伸ばしていた。
その、無自覚な女に。
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