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「こんにちは、えっと……」
「あっ、雛です!努杜雛!」
何故か設けられた、オフィスには不釣り合いの立派なソファーに腰掛けている私に希さんが話しかけてきてくれた。
慌てて私は立ち上がった。間近で見ると、本当に綺麗。
私より幾分大きな希さんは、誰もが描く、大人の女性像をそのまま再現してるみたい。
「あ、そう!雛ちゃん!新さんから話は聞いてるわ」
厚ぼったいセクシーな唇を緩めて、希さんは笑う。
「ありがとうございます……」
本当なら嬉しい、いや、嬉しいはずなんだ。こんな美人さんと関わる機会なんてないから、私を知っててもらえてたって事は。
だけど、なん、一瞬胸がチクっとした。
そう、本当に言葉通り、細い針でつつかれたような。
何で……?
上手く笑えているかどうか分からない私に、真田が近寄ってきた。
「おい、希。この前の契約どうなった」
あ、真田、希さんの事希って呼んでるんだ……。また不明の胸の痛み。
眉を寄せる私をよそに、希さんは笑顔で真田に応える。
「小林君がとってきました」
「そうか……」
真田もそれに笑みを零す。微笑み合う2人は、眩しい程お似合い。
いいなぁ……、なんて無意識に思ってしまった自分に驚く。
ダメだ、ダメだ!!せっかく休憩中なのに、私が悪い態度とって、皆さんに不快感なんて与えちゃ。気分を入れ替えよう!
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