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結局全ての洗濯物をたたまされた俺は疲労感を露にして、座布団を枕にしうなだれている。
今は寮長である夏子さんの部屋にいるのだが、何度来てもあまりに殺風景な部屋に溜息すら出る。
ドンっと荒々しく机に麦茶が置かれる。
これはたぶん俺のなんだろう。
だって夏子さんの手には缶コーヒーが握られているもの。
お前は麦茶で充分だ。そういう意味だろう。
「何、溜息ついて哀愁に浸ってるの? ……あ、わかったー。私の下着捜したけど見つからなくてがっかりしたんでしょ? 見せてあげてもいいけど、一万円ね」
夏子さんはえっへんと立派な胸を張り、腕を俺に差し出している。
諭吉と引き換えに下着を見せてやろう、という事なのだろう。
べつに夏子さんのが見たくないわけじゃないが、一万円も払ってまで見たくない。
「べつにそんなんじゃないですって、大体夏子さん下着とか着けてるんですか? どうせ面倒臭いとかで着けてないんじゃないんすか?」
グビッと夏子さんの善意? により出された極上にぬるい麦茶を口にする。
まずい。
味じゃなく、この極上のぬるさがとてつもなく気持ち悪い。
洗濯物を全部取り入れた報酬がこれだとは、なんと割に合わない仕事なんだろう。
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