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それは太陽の光溢れる昼が突如暗転し、月の昇らぬ夜になるが如く。
誰もが望まぬその運命は残酷にも訪れた。
拒むことは出来ず――
逆らう術もない――
見上げれば冷たい雨が降り注ぐ。
空から零れ落ちた涙は絶え間無く自分自身をうちつける。
見下ろしたその足元には淀んだ大きな水溜まり。
雫を受け無数の波紋が揺れる水面に起こっては、またべつの波紋に打ち消される。
前触れなく冷たい雨は静かに止む。
その刹那、不意に訪れた“にわか雨”
温かな、温かなその雨は優しく彼を包み込んだ。
寧静にも似た優しい雨は彼の頬を伝い、一滴の雫になった。
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