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基本、春日寮での門限は10時となっており、それ以降の時刻に春日寮内であれなんであれ出歩く者がいれば、夏子さんによる容赦ない鉄拳制裁が待っている。
よって誰も廊下に出歩く者もおらず、皆部屋に篭っているわけだ。
俺が今、出歩けるのは夏子さんに知らせるという理由があるから、理由が無ければ即お陀仏である。
ただし例外でトイレの時だけは出歩いても大丈夫。
まぁ、見つかって、そう説明しても信じて貰えないのが殆どだがな。
夏子さんの部屋は一階の玄関のすぐ隣に位置している。
俺の部屋とは正反対の方向に位置しているため、普段の俺の私生活の様子が夏子さんに洩れる筈もない。凄くナイスな位置関係だ。
って、そんな事はどうでもいい。今は一刻も早く春日寮に巣くう魔王に、風呂出ましたよ、と報告しなければならないんだ。
コンコンと軽く夏子さんの部屋の扉をノックする。
しかし、一向に返事は返って来ず、俺は廊下でただ立ち尽くすだけだった。
「……なんだ? もしや……寝てんのか?」
ドンドンと先程より勢い良く扉を叩く。
しばし待てど暮らせど、いや、暮らす程ではないけれど、相変わらず返事は返って来ない。
やはり寝ているのだろう。
「……仕方ないな」
俺は扉に手を掛け、ドアノブを回す。
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