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部屋の中は明かりが点いたまま。部屋の真ん中ではエプロン姿の夏子さんが机に突っ伏してイビキをかいている。
静かな部屋に良く響く気持ち良さそうなイビキに少し笑みを零してしまいそうだ。
夏子さんに近づき顔を覗き込んでみる。
整った顔立ち、キリっと細い眉毛、長く魅力的なまつげ、化粧なんてしていないだろう綺麗な素肌、すっと高い鼻、後ろでひとまとめにされているしなやかな黒髪、血色のよいふっくらとした唇、そこからはヨダレが垂れている。
おしい……非常におしい。
完璧であるが故にそこが非常におしい。
まぁ、そんな事はどうでもいい。とりあえず夏子さんを起こさないと。
「夏子さん! 夏子さん起きて下さい! 風呂でましたよー」
起こすために夏子さんの肩を揺らす。
「……うぅ~ん……うるさい」
「ッ痛!」
寝てる筈なのに、夏子さんは的確に俺の鼻に裏拳をヒットさせてくる。
俺は殴られた鼻を抑えながら床の上で無様にのたうちまわった。
そんな俺を尻目に、裏拳を繰り出した拳をゆっくりとまた元のポジションに戻し、またリズミカルに寝息を発て始める。
……絶対起きてますよね? 人を殴って楽しんでますよね?
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