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「こんばんは!」
少女はニッコリと微笑みながら、透き通るような声で挨拶をしてきた。
表情はわからない。
でも、この目の前に居る少女は確かに微笑んでいる。
そんな様子を確かに感じた。
テレビ画面の中のキャスターの無感情な挨拶なんかじゃない。リアルな声。
間違いなく少女はそこに居る。
だから……べつに返事を返しても寂しい奴なんかじゃないよな。
「……こ、こんばんは」
小さな声でうたぐりながら挨拶を返す。
どうやら少女の着ている服は俺の通う春日高校の制服のようだ。
見る限り、小柄で華奢な体格。
肩の辺りまで伸びる髪が窓から流れ込む風に吹かれながら、ふわふわと柔らかく靡いている。
「……な、何の用だ?」
「あ、その事なんですけどね……よっと」
少女はぴょんと俺のベットから飛び降りた。
その動作で少女の髪がふわりと波をうつ。
両足でしっかりと着地し、そして一歩ずつ俺に歩み寄って来る。
俺は思わず身構えて、臨戦体制をとった。
少女が一歩一歩近づいて来る度にだんだんと顔立ちが光のもとに晒されていく。
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