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言っておくが俺は不良なんかじゃない。
酒も飲まない。
タバコも吸わない。
暴力もふるわない。
原チャリにもバイクにも車にも乗りはしない。
ただ、遅刻や早退はほどほどにするし、授業態度も良くはない。
成績は極めて不良。
やっぱり俺は学校側からすれば不良なのかもしれないな。
でも、そう思われていようがなんら構いやしない。
どうせ今から真面目に勉強しても成績は簡単には変わらないだろうし。
先生達の評価もよっぽどの事がなければ覆らず、評定も上がりはしないだろう。
友人と言えるような友人もいない。
べつに今、学校を退学になっても俺自身は正直なところ構いやしない。
無力感。
目標もやりたいことも無くしてしまった俺には、目の前の全ての景色が色褪せて見えていたんだ。
今、学校に来れているのは両親に対する俺の責任。
無理言って地方から都心の高校に通わせてもらった。
ただその義務にも似た責任、それだけが皮肉にも今の俺が学校に来る支えになっていた。
あの日以来俺の時計の針は止まったまま。
あの日以来降り止まない雨。
「ッ痛……」
鞄を持ち上げる右腕に痛みが走る。
俺は鞄を左手に持ち替え、夕暮れにはまだ早い通学路を一人歩んで行く。
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