Mission NO,0

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ボロボロとも新しいとも言えない学生寮。木の札には達筆で『春日寮』と彫られている。 地方からやって来た春日高校に通う学生達が住まう寮。 男子だけの男子寮。 女子寮はここから少し遠くに位置している。行ったこともないし、これから行く事もないだろう。だから場所までは知らない。 寮にはまだ学生達は誰も帰って来てはいないようだ。 そりゃあ、俺は皆より一足先に教室を出て来たわけだし、当たり前だよな。 「あら、優太、今日はちゃんと早退せずに学校行って来たんだ?」 元気よく俺に話しかけて来たのは、この寮の管理人であり、この寮に住む学生達の母親がわりとも言える二十代後半の女性。 渡辺夏子(わたなべ なつこ)さん。 自称『独身貴族』を謡う夏子さんは今日も笑顔を絶やさない。 美人であることには変わりないが、男勝りで気の強い性格の持ち主で、下手をすればこちらが痛い目を見るような危険人物であり、俺にとって頭のあがらない人物の一人である。 夏子さんは頭の後ろで結んだ長い髪を揺らしながら、忙しそうに学生達の汗くさい洗濯物を取り入れようとしていらっしゃる。
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