83人が本棚に入れています
本棚に追加
「よし、着た。」
全然透馬の声が聞こえる。
「久し振りに着たからキチッとし過ぎてて気持ち悪いー…。」
着替えていたらしく、スーツの透馬がドアから出てきた。
神様のバカァッ!!
喉が詰まって呼吸が出来ない。透馬は開けてすぐ私に気付いて、さっきみたいに一歩下がった。
「…どうやって入って来んだよ。」
透馬はため息混じりに呟いた。
「どうした?」
透馬の呟きに気付いた話相手が聞く。
「ストーカー、また来た。」
透馬は私を指差した。
「…後ろ?」
自分が座っているソファの後ろを差されて、話相手はソファから離れたようだった。
「お前鍵閉めなかったの?」
「閉めたよ…。」
「つーか何で気付かないワケ?まぁ、警察電話しといて。俺まず便所。」
透馬は板チョコドアから出て行った。
言われた話相手はソファの背もたれからゆっくり身を乗り出し、こちらを覗く。
私はその顔を見上げた。
基絋だ。
この服装はさっきエレベーターですれ違った人。
基絋は冷たくこっちを見たが、目は合った気がしない。
イメージと一緒で凍りそうな顔をしていた。
最初のコメントを投稿しよう!