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それは透馬も思ったらしく、
「その変な女、庇ってどうなんの?しかも子供騙しで。」
と基絋に怒る。
「透馬。こんな冗談本当に面白くねぇぞ。」
基絋も怒り、透馬を睨む。基紘の眼光は誰よりも冷たい。
基絋の強気の目に透馬はすぐに戸惑いを見せ、私をジッと見る。
見えているのを確かめようと片目を隠して見たりし始めた。
「本気かよ…。」
基絋も再び驚き、私の方に手を伸ばす。
大きく左右させるその手を私は身を縮めて避けた。
「もっと下。」
透馬は指示を出した。
その指示どおり基絋は、床を撫でるように手を伸ばす。
その手は勢い良く振られ、丁度私の顔面を目指した。
「危なっ…。」
透馬が叫んで止まった。
私は反射的に目を瞑った。
けど痛くなかった。
ホッとして目を開く。
頭の方に風が通ったので、基絋が避けてくれたんだと思った。
感謝しながら基絋を見上げると…けれど、基絋の手は忙しなく空を切って動いている。
信じられなくて、口から何か飛び出そうな、グラッと気持ちが悪くなった。
基絋の手は私の体があるはずの空間に侵入し、スカスカと動かされていた。
これが、自分の置かれている重大な状況に気が付いた瞬間だった。
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