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一歩ずつ。
踏み締める度に足下の細かい石が音を立てた。
-ジャリッ…ジャリッ…-
砂利。
(砂利ってジャリジャリ音するから砂利って言うんだろうなぁ。)
ゆっくり、音を聞きながら歩く。
(砂利…砂利……砂利……。)
緊張で一歩一歩が徐々に重くなってく。
ただの緊張だけ。気持ちは行きたがってる。
-ジャ…リ-
僕は立ち止まり、目的の墓と向き合った。
空は真っ青なのに、冬の風は痛い。
-チクチク……ジンジン…-
痛みで泣きそう。鼻に入った凍りそうな空気が涙腺を刺激する。
やっと、此処に来れた。
彼女の墓を前にしたら、彼女が本当に死んでしまう気がして、怖くて来れなかった。
僕は彼女を思い出す度に憎しみ狂って、死んでしまいそうだったから。
(やっと…やっとだよ…。)
「久しぶり…。11年ぶり?…ごめんね?」
しゃがみ込み、墓を見上げ、しっかりと見る。
風が目を乾かし、乾いた目を守ろうと涙腺が涙を提供した。
「今、千の風にって歌が有名なんだけどさ。……やっぱり…泣いちゃうよね…。」
誰もいない真冬の霊園に、僕の嗚咽だけが染み渡った。
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