83人が本棚に入れています
本棚に追加
透馬の前を通り過ぎ、廊下を静かに進んで玄関に立つ。
靴が無い。
私は裸足で途方に暮れる。
私はどうやって此処に?
止まっていると、苛立った透馬が私に近づく。
恐くて固まって目をつぶる。
透馬の足音が怒っている。
「早く出てって。」
怒鳴り出しそうな声。
目を開けると、私を通り過ぎ透馬は私の目の前の玄関のドアを開けていた。
私は玄関に裸足で降りた。
石だと思われる玄関の黒い床は不思議と冷たくなかった。
砂粒さえ感じられず、滑らかで、何も触れていないんじゃないかって思うほど。
その感触は玄関の外も同じだった。
玄関から一歩出ると、すぐに透馬は大きな音を立てて玄関を閉めた。
閉まる勢いで出来た風に押されそうになる程強く閉められた。
閉めたと同時に鍵の音を聞く。
悲しくなる。
どうしてこんな事になってしまったのか、考えながらエレベーターへ足を進めた。
透馬への想いが強過ぎて不思議な力が…?瞬間移動?
下を向いて歩き、ハッとして足を止めた。
エレベーターが私の目の前に来ていた。
エレベーターの扉が鼻の先に付きそう。
最初のコメントを投稿しよう!