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『はぁっっ!』
ふざけてるとしか思えないような
おかしな掛け声をかけて
物理攻撃を行おうとすれば
ガイィィン…
張られている魔法陣に
見事に弾かれて。
『くっ……ならばっ!』
これならどうだっ!
めげずに魔法を使って
由佳の邪魔をしようとすれば
バチィィィンッ!
魔法を無効化する結界に
綺麗さっぱり跡形無く消されて。
バリィィ……
『いっ……っ…』
トドメと言わんばかりに
強くなってきた全身の痺れ。
俺は思わず顔を歪め
片膝をつく。
『……どぅして…』
―――ピチャンッ、と
俺の目から一筋の涙が溢れる。
もうイヤで!
この状況に堪えられなくてっ!
俺は深く俯き
地面についてる手に力を込める。
唇を噛み締めて
必死に涙をこらえてた。
『……なんで。
どうしてなんだよ、由佳っ!』
最初から俺たちを裏切るつもりで
近付いたのかよ。
あの笑顔はっ!
過ごしてきた日々はっっ!
全部全部
嘘だったっていうのかよ。
そんな思いで一杯になりながら
俺はバッと顔を上げる。
そして大きく、
限界まで目を見開いたんだ。
『由…佳……?』
―――兄ちゃんを殺したくせに。
今まさに俺を封印しようと
魔法を唱えてるくせに。
俺たちを、裏切ったくせに――
『イヤだ』
なのに顔には
ありありとそう書かれていて。
悲しみに染まった瞳からは
涙が流れていた。
ハラハラと。
それは綺麗に。
ゴクリと息を呑んで
俺は動けなくなってしまった。
見間違いじゃないのかと
目を細めて由佳を凝視するが
やっぱり彼女は泣いていた。
……どうして?
なんでお前が泣いてるんだよ?
一番泣きたいのは俺だって……
「…この者を封印せよ!
『血の十字架‐ブラッディクロス‐』」
由佳の鋭い声が
辺りに静かに響き渡った。
俺はハッと我に返るが
もう遅い。
『……ぅ……うわぁぁあぁ!!』
まばゆい光と共に
俺の身体はある場所まで吹っ飛び
はりつけにされる。
なんとか首だけ動かして
背後のモノを見れば
それは
透き通った青色のクリスタル。
見た者を魅了する
妖しい力を秘めたモノ。
…な……んだ?
心に温かいモノが流れ込んできて
それがすごく心地よくて。
俺はクリスタルに
見入られてしまった事に気付かず
深い眠りについてしまった。
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