第一章

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『……佑希…っ』 擦れていく意識の中。 由佳の悲しみに満ちた声と 優しい温もりを感じた気がした。 “…こうして俺は封印され、 兄ちゃんは命を落としたんだ。 ……で、 その兄ちゃんの生まれ変わりが 真……君なんだよ……” 真っすぐ心に響く君の言葉に 僕はゆっくりと目を閉じる。 「…何となくそんな気はしてた」 “…………” 「…………」 ―――互いに何もしゃべらない、 そんな時間が生まれる。 正確に言えば 考え事をしてるんだけど。 激しい頭痛と共に 一瞬、本当に一瞬だけ 脳裏に映し出された過去の映像。 そこにはたくさんの人がいたのに その中の君の姿だけが 僕の頭から離れないでいた。 フワリと優雅に風に舞う 白銀の長髪。 僕の目を一瞬で奪ってしまうほど 整った顔立ち。 澄んだ碧色の瞳。 形のよい唇。 華奢に見えて でもそうでない事を物語る 着物から覗く程よく焼けた四肢。 それに加えて いつも僕をドキドキさせる 低く、甘く、優しい声――― 僕はスッと目を開け ギュッと拳を握る。 僕は君に、佑希に逢いたい! どんなことをしても!! そのためだと言うのなら 僕はどんな罪にもまみれてやる! もう僕は迷わない! 君と生きるために!! だから―…… 長い長い沈黙を破ったのは ―――僕だった。 「………佑希。 僕は……禁魔法、使えるの…?」 “…………真?” 「僕は…… 僕は、佑希の封印を解き 佑希と共に生きたい…!!」 僕の瞳に炎がやどる。 熱く、強く、真っすぐで 消えることを知らない。 そんな、生まれたばかりの 勢いのある炎。 “……いいのか? 俺の封印を解くって事は 世界の人間を敵に回すんだ。 俺は禁魔法を使える『異端児』、 世界の兵器みたいなもんだ。 当然のように嫌われてるし、 恐れられている。 それに―……” 「……じゃあ」 “………へ?” 話の途中で突然口を挟んだ僕に 佑希はマヌケな声を出す。 それは心の中で 笑っておくことにして。 僕は言葉を続ける。 「巻き込みたくないならば。 僕を危険な、大変な目に あわせたくないと思うならば。 何で僕の前に現れて 契約を持ちかけたりしたの?」 “それは―……” 「どうしても助けだして 欲しかったからでしょう…? それなら今更 僕を想って迷う必要なんてない」
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