第一章

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わからないと言うのなら ちゃんと君に伝えてあげるから。 君と一緒に生きることが これから僕の全てになるんだ。 そのための試練だと思えば… …ほら、僕が傷つくことぐらい 軽いモノでしょう? だから……ね? すっかり黙り込んでしまった君に そう素直に気持ちを伝えたら “………ありがとう…” 少し涙声で 君は言ったんだ――― 「―――っ真っっ!!」 「のわぁっ!? ―――ってぇ… うっぎゃあぁあ!!」 カナの大声により一気に 現実世界に引き戻された僕。 いつのまにやら本屋からは出てて 周りが田んぼに埋めつくされた 一本道を歩いていたんだ。 ボ―ッとしてた僕を心配して カナが声を掛けたまでは まだ別に良かったんだけど―… (「のわぁっ!?」と 盛大に驚いてしまったけど) ―――ゴンッ 「―――ってぇ…」 その後僕の完全な不注意で すぐ目の前まで迫ってた電柱に 頭を強く打ちつけて。 とどめに よろけた拍子にバランスを崩し 不運にもそこにあった田んぼに 格好良くダイブしたのだった。 「うっぎゃあぁあ!!」 「………っ…」 僕に対して背中を向け 肩を小刻みに震わせるカナ。 “………大丈夫…?” 僕を哀れんでか、 オドオドした声で話す佑希。 「…………」 そして 泥にまみれたショックで その体制から動けないでいる僕。 …いや、動いたけど。 いつまでもこの中にいるなんて すごい気持ち悪いし 何より道行く人に ジロジロ変な目で見られるから。 少し長めの前髪から ベトベトと泥水が降ってくる。 『水もしたたるいい男』っていう 言葉はあるけど 『泥水もしたたるいい男』 ってどうよ? ってか泥水したたってても 全然格好良くないし。 むしろダサい。 僕は無言で田んぼから ゾンビの如く這い上がり ペタリとその場に腰をおろす。 ハァ~…… そして一人で大きくため息をつき 空を見上げたのだった。 「だはははははっ! あ~、いいモン見れたわ! 真、ナイスっ」 僕の家の中。 瞳にたまった涙を指で拭い 大口を開けて豪快に笑う カナの声が響き渡っていた。 ム―…… 僕はそれを無言で睨みつける。
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