第一章

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こんな感じで 僕が自己嫌悪に陥ってる間 カナはどうして良いかわからず。 「し―ん―。 しぃ―ん―くぅ―?」 「お―い、生きてる―?」 オロオロしながらも 時々そんな言葉を掛けながら しばらくは様子を見ていたんだ。 だけど突然 自分の髪をグシャグシャにしたり 頭を抱えうなだれる僕を あまりにもやばいと思ったのか。 「え、おい!? ちょ―………っ!」 少し焦った声を発してから 僕の背後に回り込み。 優しく包み込むように 後ろからギュッと抱き締めた。 「………へ?」 そこで僕の不審な動きは ピタッと止まる。 ドクンと心臓が鳴って。 「……カナ?」 僕は驚き名前を呼ぶが 返事はない。 「カナ?」 後ろから伸びる逞しい腕に 自らの手を添えて。 今度は身体ごと振り向いて カナの名前を呼ぶ。 「!!!」 すると目の前にカナの顔が! いや、振り向いたんだから 顔があって当たり前といえば 当たり前なんだけどっ! ちっ……近い近い! 僕は顔が熱くなるのを感じて グルッと大きく顔を背ける。 その反応を見て カナも顔を赤らめたが 僕が気付くことはなかった。 ……くそぅ、 なんかすごい悔しい。 カナって身体はごついくせに 顔は綺麗なんだよ。 それはそれは 男の僕が見惚れてしまうほど。 直視なんてできっこない! 「………真…」 抱き締められた状態で、 耳元でそっと囁かれた。 背筋がゾクッとなる。 「真……。 なぁ……俺を見て?」 …やめてよ。 そんな甘い声で言われたら 逆らえないじゃん…。 僕がゆっくりとカナの方を見れば それは綺麗に微笑んでいた。 「…………あのっ…」 「……ん~?」 「ちっ……近くないっ!?」 「…そう?」 そうだよっっ!! 心の中で 声にならない叫びを上げる。 「ん―、でもさぁ、 真って抱き心地いいんだよね。 ちょっと離したくないなぁ」 「ちょっ……」 ―――ドキドキと 凄い速さで動く心臓の音が 騒しくて、気付かれたくなくて。 顔にかかるカナの吐息が 妙に熱くて。 どうにかなってしまいそうだ… そんな想いから 僕が一人でソワソワしていれば 「いっ……!?」 急にデコピンされた。 この……っ! 自分の力、考えてよ。 ズキズキと痛む額を押さえ 涙目でカナを見る。
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