第一章

16/17
前へ
/525ページ
次へ
「バ―カッ! 少しは落ちつけって―の」 「……痛い(泣)」 「そりゃそーだろーよ。 おら、これでも飲んで落ちつけ」 「……ん」 そう言ってカナに手渡されたのは 冷たぁ―いココア。 僕は黙ってそれを受け取り そっと口付ける。 「…………」 プハァ… あぁ、おいしい~。 ココアって良いよね~。 この、何ともいえない まろやかさが―… …って、んん゛? 「……カナ」 「なに」 「よくよく考えたらここ僕ん家」 「あぁ、そうだな。 よくよく考えてみるまでもなく ここはお前ん家だな」 「………」 カナのふざけた返事に唖然とし、 それと同時に怒りを覚える僕。 ワナワナと手を震わせ ギュッと強く拳を握りしめる。 「…僕、一人で家入ったよね?」 「おぉ、入ってったね。 俺の目の前でガチャンって ばっちし鍵かけてたし」 「だよね―っ。 じゃ―なんでカナが 僕ん家にいるんだって話」 「んん? あぁ、その窓から入った」 ニヒッと妖しく笑うカナ。 そしてふと 彼の指差す窓を見れば 「………え~…」 一体何が起きたんだよ…って 真剣に考えたくなるほど 悲惨な事になっている。 「だ――っっ!!そーゆーのっ! 不法侵入って言うんだよっ」 ついにキレた僕がそう怒鳴ると カナはフッと鼻で笑い 「わりぃな。 俺の辞書に『不法侵入』という 文字はないっ!!」 ビシッと親指を立てて ウインクしてみせる。 爽やかでかっこいいけど 今の僕には何の意味もない。 むしろ余計に 僕を怒らせる原因となる。 「なに格好いい事言ってんのっ」 「なに、俺、格好良かった? 真、惚れた?」 「なっ……… …んなワケないでしょ、 この大バカヤロ――っ!!」 「うぉっ!!? 来んな、来んな! ぎぃやあぁぁ――!!」 ―――こうやって カナと馬鹿な事をして笑いあう、 それが僕の偽りの日常。 知らないから、笑っていられる。 知らないから、傍にいてくれる。 それが僕の 心の支えになっているんだ。 …少しずつ、 でも着々と進んでいく物語の中で いつか僕が敵だとわかるだろう。 佑希の封印を解こうとしてる 反逆者だとバレるだろう。 でも仲間や友達、カナとは 戦いたくない。 傷つけたくない。 殺したくない。 今はまだ、大切だから―…… …だから、お願い。 どうか最後まで気付かないで。 佑希の封印が解けるまで…。
/525ページ

最初のコメントを投稿しよう!

402人が本棚に入れています
本棚に追加