第零章

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―――銀河系 未だかつて地球人に 発見されていない惑星の一つ 『セリス』 五つの帝国『アリスタン』 『エーヴァン』『フランシウス』 『リズナーン』『レイミン』に 分裂された本島と。 二つの離れ孤島『アイシス』 『リトルバ』から成る世界。 年間平均気温は10℃と、 やや低めであるにも関わらず。 澄んだ空気に 草木の生い茂る大自然。 魚の棲む川や海もあれば 富士山のような でかくて立派な山も存在し。 動物もいれば人間もいる。 そういう点では 地球とたいして変わらない、 そんな世界の物語――― ただ、生きたい――― 彼らがそう切に願っていると 知っていながらも。 私はこの手で、自らの手で 彼らの行く手を塞いでしまった。 それどころか。 追い詰めて、ひどく傷つけて、 ついには―…… 彼らにとっての悲劇。 それはこの時代に。 この『セリス』という惑星に。 この『アイシス』という地に 生まれてきてしまったこと。 そして『禁魔法』―…… この人々に忌み嫌われた魔法が 扱えたこと。 それが全てを狂わせたんだ―… 秋から冬に季節の移り変わる頃。 普段ガヤガヤと賑わう街から この日、この時を境に 全ての色が消えてしまった。 …いや、違うか。 私の心が壊れてしまったんだ。 「よくやったな、由佳。 お前に任せてよかったよ」 「…………」 ニヤリ、と 妖しい笑みを浮かべた人々は ポンッと私の肩を叩くなり、 次々とこの場を去っていく。 私はそんな人達の背中に、 光の宿ってない虚ろな目を向けて ただただ立ち尽くしていた。 「…ねぇ、スキだよ……」 伏し目になって 囁くように紡いだ言葉は 風によって掻き消され。 私は両手で口元を押さえると ボロボロと涙を流したんだ。 「いや…いやぁ…… ……ごめんなさい…っ……!!」 周りに誰がいようが、 今の私の姿を見て 周りがどんなに不審がろうが、 そんなの関係ない。 私は力が抜けたかのように その場にヘタリと座り込み。 目の前の二つの影を見つめて ただひたすら泣き叫ぶ。 瞳に大粒の涙をためて。 ガクガクと震える手で 頭を抱えるようにして。 「ごめんなさい……っ!」 うわごとのように、 ひたすらこの言葉を………
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