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―ダンッ
散弾特有の、何かが弾け飛ぶような銃声が廃墟化した市街区に響いた。散弾はGA(グローバル・アーマメンツ)社のノーマルに直撃し、その装甲に満遍なく穴を開けた。ノーマルは一瞬仰け反ったが、すぐに『私』の前で爆散した。
―ピピッ
無機質な電子音が私の耳に届く。と同時に、新たな標的を捕捉したという情報が、感覚のひとつとして私の脳神経を駆け巡った。目標は、私が今倒したノーマルの奥だ。
私は愛機に命令を下し、鳥のような脚を持った異形の機体を高くジャンプさせた。ディスプレイを覆っていた爆炎から離れたことで、目標をはっきりと見ることが出来た。
敵の数は3、それはレーダーで分かっていたが、いずれも先程と同型で、GAお得意の重装備を施していると分かった。ノーマルがその右腕を上げ、こちらに得物であるキャノンを向けようとする。
しかし、廉価版のノーマルごときの腕部モーメントでは、立体的な戦術を得意とする逆関節型を捉えることなど困難だ。私は空中でファイバーフロウを180゚旋回させ、ノーマルの背後に降り立たせる。そのまま、腕部一体型のショットガンと肩部バックショットから散弾を放ち、3つの鉄塊を製造した。そして、私は開きっぱなしにしていた通信回線を通し、連絡を送った。
「…ファイバーフロウより《リバードライブ》へ、ノーマルの排除完了」
『…リバードライブ了解。こちらも済んだ、間もなく合流する』
スピーカーから、男の声が聞こえてくる。それから数秒と経たぬうちに、倒壊したビルを飛び越え、人型の機体がこちらに近付いてきた。
『ファイバーフロウ、機体状況は?』
会うや否や、眼前の機体から、先程と同じ男の声で通信が入った。
「AP(アーマー・ポイント)約82%、残弾約半数」
私は必要事項だけを、素っ気なく述べた。…勘違いされるかもしれないが、意図して素っ気なくしている訳では無い。
『了解だ。こちらも問題は無い』
向こうもそれを分かっているのだろう、彼は普通に返事を返してきた。彼は《国家解体戦争》の時から共に戦い続けてきた、戦友だ。私が参加したのは大戦末期だったとはいえ、彼と会って5年は経過している。それゆえだろうか、戦場という殺伐とした環境下にあっても、今は―彼の声を聞くと―落ち着けるような気がした。
『リバードライブ、ファイバーフロウ両機へ、敵ネクストを確認しました』
…そこへ、オペレーターの声が割って入った。
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