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その分扱いは極端に難しく、この武器をレイヴン時代から愛用する彼は、職人と言えるだろう。
『《シブ・アニル・アンバニ》…《オリジナル》の力、舐めるなよ!』
彼はキャリオンクロウに向け、挑発に近い台詞を吐いた。彼も私達と同じ、イクバール所属のリンクスだが、今は敵だ。
私は彼の援護のため、背部に装備した散布型ミサイルを展開し、キャリオンクロウに向け発射した。計16発の小型ミサイルが緩いカーブを描き、キャリオンクロウの華奢そうな細身のボディに迫る。
しかしキャリオンクロウは、その両腕に握ったショットガンとマシンガンをミサイルに向け連射した。放たれた無数の弾丸はミサイル群の内の一発に命中し、爆発させた。するとその爆発は他を巻き込み、16のミサイルは全て消し去られた。
『フッ…それでもオリジナルとはな!』
キャリオンクロウから通信が入る。こちらは、完全な挑発だ。こんなものにいちいち乗っていたら、敵の思う壺だ。心理戦もまた、実戦においては重要なファクターの一つであり、少しの感情の変化が挙動に影響するネクスト戦においては、特にそう言える。それに、わざわざ敵とお話する余裕など、冷静に考えれば必要すら無い。
故に、私は基本的に戦闘中は無口を決め込んでいる。…第一、話すこと自体、私にとっては厳しい。いや、別に人見知りという訳では無くてだな…。
『フッ、それでも元バーラットとはな!』
私の代わりに、彼がそっくり言い返した。見ると、彼はキャリオンクロウの側面に回り込み、ショットガンを連射している。キャリオンクロウはそれをクイックブーストの連発で回避しているが、高速戦闘こそ、彼の十八番である。いずれ、ブレードのレンジ内に納められるだろう。
『フン、貴様の手など!』
キャリオンクロウは冷静に後退を続け、銃撃戦を行っていた。ショットガン一挺vsショットガン&マシンガン、これだけ見れば、彼の方が圧倒的に不利だ。だが、こちらには数の利がある。私はバックショットを展開・発射し、更にミサイルを再度放った。
『援護、ナイスだ!』
彼が称賛の通信を入れてくる。後退のため、単純な機動パターンをとっていたキャリオンクロウは、大量の弾丸をかわしきれず、バランスを僅かに崩してしまった。
彼はこれを、好機と見た。オーバードブーストを展開し、ブレードを備えた左腕を引く。急速に距離が縮まり、刹那、明確な殺意を持った『杭』が打ち出された。
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