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「ああ、近く任務があるのでな。私の《アートマン》の調整だ」
「任務?ドクターが出るほどの任務ですか?」
今度はシブ・アニル・アンバニが尋ねた。サーダナさんにお呼びがかかったのだ。かなり「上」の方からの指示なのだろう。
私達がその任務とやらに興味を持ち出したその時、サーダナさんの表情が妙に輝き出したような気がした。
「作戦目標自体は、GA社重役の暗殺だ。だがそれよりも…アナトリアの傭兵が護衛にあたるらしい。今から楽しみでならんのだ」
サーダナさんは、遠足を明日に控える子供のように語り出した。アナトリアの傭兵…あのサーダナさんが、こうも興味を抱くほどのリンクスだというのだろうか…。
「GA重役暗殺…ああ、ゼクステクス世界空港で、バーラットと共闘するっていう、あれですか?」
するとシブ・アニル・アンバニは、納得したように言った。彼はもうバーラット隊ではないとはいえ、彼を慕う者は多い。彼自身もまた、バーラットの隊員と何らかの交流を持っているに違いない。どうりで、自分の任務とは関係無いにも関わらず、詳しいわけだ。
「そうだ。…しかし、アナトリアの傭兵、実に面白い素材と聞いている。新参と言うのに、アマジーグにスス、どころかメノ・ルーに、テクノクラートのボリスビッチすら倒したそうじゃないか」
やはり楽しそうに、サーダナさんは続けた。
…そうだった、アマジーグとスス、AMS適性の低い彼らならまだしも、GAの守護神と呼ばれたメノ・ルーをも傭兵は撃破したのだ。そしてボリスビッチも、メノ・ルーと比べるのは酷だろうが、オリジナルだ。彼の乗機がボロボロの状態で回収されたのは、グループ内でも有名な話だ。まあ、奇跡的に生きていたそうだが…。
「伝説と言われた元レイヴンが、如何なる存在なのか…考えただけで心が躍る…!」
サーダナさんは、更に悦に入っていった。《イクバールの魔術師》と呼ばれるこの人は、数学者であり、敬虔な宗教者でもある。この人が普段、一体何を考えているのか、私達にはさっぱり見当もつかない。あえて言うとすれば…マッドサイエ…
「おっと、そろそろ行かなくては。では、茶会を邪魔してすまなかったな」
サーダナさんは突然そう言うと、そそくさとネクスト用ガレージの方へ行ってしまった。
…タイミングが良かった。つい、サーダナさんに失礼なイメージを持ってしまうところだった。今の事は不問にしておこう。
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