第二章 死に逝く者と生き延びる者

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桃すら見えなくなり自分の体も動かせない、人としての機能を全て失った俺の頭は何も考えられなかった。 ただ、さっきまで酷く全身が痛かったのが今は何も感じない。それ以前に手足がないように感じている。 もう何も怖くは無かった。 俺は無に還る気がしていた。 そんな何も感じない状況の中、突然体が動いて目も自然に開いた。 目を開くと見た事の無い光景が広がった。 それは何も無い薄暗い空間に俺はいて、周りを見ると人や動物が無差別に血を流している。 俺は見た目や臭いで気持ちが悪くなりひざまずいていると暗闇の奥から誰かが歩いて来る。 誰かは俺と少し距離を置いて立ち止まり、俺の所までは来なかった。 その人の足元は肉眼で見えたが足元から上は暗闇に遮(サエギ)られていて顔は解らない。
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