宿なし平吉

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そんな時だった。 「おや。灯りだよ、なんて付いているんだ」 どうやら、自分と同じく山を超える者がいるらしい。 これ、幸いと近づく平吉。 「おーい、そこの方…」  提灯の灯りで、だんだんとはっきりと相手が見えて来た。 白い羽織袴、烏帽子、ほら貝、錫杖。山伏の一式が見えた。 平吉は、背中にさぁっと冷たい汗をかき始める。 (まさか、天…… 「はい。何か御用かな?」  相手がくるりと、振り返った時にはすでに遅し、向き直って顔が見えた。  整った顔立ちに、猫のような目に薄い唇。 そして、女子にしては珍しく髪を馬の尾ようにしている。 ………しばし、頭の働きが停止する。 
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