宿なし平吉

2/4
前へ
/4ページ
次へ
「ああ…どうして、あたしはこう運が無いんだろうか……」  平吉は山の中で一人、頭を抱えていた。 平吉は、奥州に店を構える貧乏ちりめん問屋の奥志摩屋の次男で、食い扶持のために家を出されたくちだ。 なのでせめて、自分の食って行ける分はと思い、江戸に居る叔父の下を頼りに奉公先を捜すのだ。 しかし、初めて奥州を出たため勝手がわからずこうして、山の中で迷ってしまった。 周りを見渡すと染み通るような、不気味な暗さの山だ。 木々の間から、火の玉でも飛んで来たら……なんて思うと怖い。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加