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「おいちゃーん! 兄ちゃんの目が覚めたみたいだよ!」
半開きだった開き戸の外から陽気な声が聞こえてきた。甲高く、それでいて幼い声。
勢い良く開き戸が開き、音のする方に首を向けると、生え揃っていない白い歯を剥き出しにて、天使の笑みを少年に向ける男の子の姿があった。
「兄ちゃん大丈夫? 大怪我して倒れてんのを俺が見付けたんだよ」
ああ、あの時に見た子どもの影は死神ではなくこの子だったのか。少年は重たい物が肩から滑り落ちるような気がした。
「ありがとうな。死にかけていたから本当に助かったよ」
身体の痛みは治まっていなかったが、それを表に出さぬよう、上体を起こして礼をする。
「いいよ」
男の子は無邪気に笑いながら、少年の側に寄ってきて隣に座った。
人なつこく、愛嬌がある。誰にでも愛されるタイプだろう。
「これ、兄ちゃんのだろう?」
男の子は持っていた大太刀を少年に差し出す。
少年は右手で刀を受けとると、「僕の愛刀……拾ってくれてありがとう」と言葉と共に男の子の頭を撫でてやった。
えへへ、と男の子は親に誉められた子どものように無邪気に笑う。少年も自然と口元が緩んでいた。
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