封印

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「僕はどのくらい、気を失っていたのでしょう?」   「一晩ばかりじゃな。良く眠っとったわ」    そんなに……と少年は心の中で呟く。  老人は少年が何か考え込んでいる様を見て、触れてはいかんことを口にしたのかと思い、話題を変えた。   「そうそう、ここは山脈の麓の小さな村。わしゃ、村長をやっておる。お主を助けたあの子は、孤児じゃ。両親を悪魔に殺されてしもうた」    少年はその話を聞くと神妙な面持ちになり、境遇が酷似している自分とあの男の子を重ねてみたが、自分の想像力をもってしてもその子の痛みは分かるわけがなく、同情することは止め、老人の話を傾聴することにした。
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