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山脈の麓の村でいつまでものんびりと過ごすわけにはいかない。
少年は老人からの飯というこの上無い恩恵を受け取ると、修繕してあるスーツ――恐らく老人が直してくれた――の上着から紙とペンを取った。そこに感謝の言葉を書き、そっとお盆の上に置く。
日が暮れる頃には村を出ようと考えていた少年だったが、安息と平穏を暫しの間だけ堪能することにした。
障子に映る夕方の影。
先の見えない仕事に、嫌気が差してきていた。はあ、と溜め息を吐く。
仕事を放棄して、このままここで過ごすのも悪くはないだろう。そう小声に出してみたが、すぐに頭を振った。
悪魔の殲滅が先だ、と。
少年は軽い頭痛に襲われながら、再び布団の温もりに吸い込まれていった。
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