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少年は夢を見た。
真っ暗な場所で、一人の男の子が生気を抜き取られているように立っている。
何をしているのか少年が問いても、男の子は答えない。
ただ沈黙を守るばかり。少年がその子をまじまじと観察していると、突然男の子の両手が輝きだした。
男の子の両手はみるみる間に雷のそれと似た電光を帯び、そして、唸りを挙げた。
男の子から発する光はゆっくりと辺りを照らす。
視界が晴れると、そこには赤い物体が二つ置いてあった。元からあったのだろうか。
それは、胴体に大きな穴が開き、飛び出した臓物が生々しく空気を吸っている。血まみれのそれは、見たことのある顔……父と母の……。
男の子が少年を見た。
男の子の口角の筋肉は極限にまで緩んでいた。顔一面に浮かんでいる不敵な笑みに、少年は思わずたじろく。
赤茶色に染色している男の子の両手。
そして男の子の髪と眼も、汚らわしい色の、〝赤〟。
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