215人が本棚に入れています
本棚に追加
「ま、いいや……えっと、おかえり」
神父は立ち上がり、微笑んだ。
「ただいま」
ぶっきら棒に答えるジーク。
「サモンベルジュ山脈に行って来たんだって? また派手にやらかしたね」
ジークの身体中の無数の傷跡を見て神父が心配そうに言う。
「こんなのすぐに治りますよ、かすり傷ですから」
「闇死(やみじに)の魔力を自分に還元したら? 意地を張っても自分が死んじゃったら元も子もないでしょ」
「これは自戒です。死んだとしても魔法は使わない」
闇死と呼ばれた黒い刀をギュッと握りしめ、眉を寄せる。眉間の皺が、ある信念を浮かばせているようだ。
「そんなに気を張らないでさ、ボインの子でも見て心を豊かにしていこうよ」
「女は胸じゃなく……」
「性格って言いたいの?」
「……鎖骨」
「深いね。ある意味、うなじよりも」
なんて脳天気な神父のペースに持っていかれてしまうが、神父のくせに人間臭さが漂っているこの人を、ジークは父親のように慕っていた。
最初のコメントを投稿しよう!