報告

9/16
前へ
/282ページ
次へ
「暗澹とした面持ちで一体どうした?」  気付くと神父の顔が迫って来ていた。「SMクラブってどんな所なのかなあ、と思って」なんて言えるはずもなく、何でもない、と適当に答える。 「そう? ならいいけど。ささ、ちょっと長かったけど私の書斎へようこそ!」  神父が身体を横にどかすと、木造のドアがそこにあった。  装飾はなく、右方にドアノブが着いている程度の簡素な造り。  おそるおそるドアノブに手を伸ばす。  ドアの先は見たことのない景色が広がり、聞いたことのない声がジークの名前をドアの向こう側から呼んでいた。  そんな非幻想的な妄想をしながら開いたドア。    しかし、ジークを待っていたのは書架と無数の本、本、本。 「何だ、これは……」  思わず口にしてしまうジーク。 「本さ!」  分かり切った返事をする神父に嫌悪感を覚えた。
/282ページ

最初のコメントを投稿しよう!

215人が本棚に入れています
本棚に追加