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「陰陽一体、表裏同面。正義があるから悪はあり、故に悪があるなら正義もあり。では、その内のどちらかが欠けてしまったら?」
「何を……」
死兵は言葉遊びを楽しむ子どものように、喉を鳴らしてこう続けた。
「私たち悪魔は人類に仇名す絶対悪。故に君たち、デーモンシールがいる。そうですね?」
「……」
改めて突き付けられるその事実。そう、それは間違いない。
悪魔に対する唯一の対抗勢力、デーモンシール。
「今はどの国も私たちを殺すことに躍起になっているからいいものの……では、私たち全てを滅ぼした後、君たちはどうするのです?」
「どういう、ことだ」
「普通の生活に戻れるとでも思っているんですか? 悪魔すら滅ぼす力を持ち得る、化け物が」
「――! それはっ……!」
男の反応が、ただ純粋に面白い。
破顔する表情さえ作れない死兵だが、もしも皮膚が、筋肉があったなら、その顔は目元から口元まで、全てが緩んでいただろう。
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