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ジークは椅子に深く腰掛け、うーんと唸った。
悪魔、竜、魔法がある。
精霊の存在を否定することはできない世の中であり、何より神父が嘘を吐く理由も思い当たらない。
「君に見せたその本は、私の先祖が書いた物だ。その本にも精霊の記述がされているし、精霊と会う方法も載っている。良かったらその本を持っていってくれても構わない」
「大切な物なんでしょう」
「いつか返してくれればいいよ」
神父は笑みを浮かべ、立ち上がった。
「ここにある本はね、皆先祖の著作物ばかりなんだ。代々受け継がれているもの。……私は先祖たちのことを忘れたくない」
一瞬哀しい表情を見せたが、また直ぐに覗かせる即席の笑顔。
「今では誰も信じない先祖の夢を、君なら叶えてくれると思うから、その本を託した」
「キャッチセールスではなくて?」
ジークはこんな風に言われたことがなければ、誰かに全幅の信頼を置いてもらえることなんてなかったため、どう対応して良いのか分からずに自分の赤髪と同じくらいに顔を赤らめ話を反らした。
「いいや、優しさの押し売り」
神父もそんなジークの反応を見て、面白がっている反面、絶対の信頼を置いているのだろう。
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