誕生

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「違う、なんて言わないですよね? 現に君は、遥か昔に人類が発明した銃火器の悉くが効かない化け物を屠ってきたんですから」  後ろにあった大樹に背を預け、死兵は一言こぼす。 「さあ、ここで問題です。そんな化け物な君たちを、悪魔がいなくなった世界で嫌うのは誰?」  死兵は男を軽く一瞥した。男は反論するでもなく、慌てた顔で柔い侮蔑を放つのみ。 「……家族、友達、教師? 残念ハズレ。正解は君たち以外の全ての人間、ですよ。私たち悪魔の生誕はご存知でしょう? 300年前に起きた、謎の異常気象。大規模な自然災害によって、君たち人間の人口は大分減りましたね。だけど、それだけでは終わらなかった!」  いくら聞く耳を持たないようにしても、直接鼓膜に響いてくるような重たい声だ。 「君たち人間は自然災害を理由にし、民族扮装、大陸戦争までを勃発しはじめた。この負の流れに呑まれ、世を憎み、恨んだ人間の心が私たち悪魔という存在を生み落としてしまった。まあ、なぜか願い、希望に溢れる人間もいたようで、その心は魔法となり……私たち悪魔を退ける力となっているようですがね?  しかし、それも無意味なんですよ。なぜなら、悪魔を根絶した次は……」  死兵の言葉が終わらない内に、男の視界がゆっくりと爆ぜた。
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