封印

2/15

215人が本棚に入れています
本棚に追加
/282ページ
「らしくない……」      赤髪の短髪、スーツ姿の少年は呼吸の仕方が分からなくなっていた。今まで当たり前に行ってきたことなのに、と自身を罵り、参ったな、と眉間に皺を寄せた。  折角の一張羅は無惨にも引き裂かれ、縫い目が「助けてくれ」と悲痛な声を挙げているようだった。  なるほど、通りで胸が苦しいわけだ、おまけに口から血が出ているじゃないか、内臓でもやられたかな――不思議と頭は混乱さえしていなかった。    痛みに齲まれている全身。肉を削ぎ取られたのだから当たり前か。出血している部位に視線をそそると、痛みが何倍にもなる。  霧と霧の間から朧気に写る景色に視線を変えた。つまらない眺めだ、と思う。  唐突に、また胸が痛み始めた。胸に手をやり、身体をよじる。    このようなやり取りをして数時間。今では何も感じない。その代わりに視界が霞んで見えるようになっていたが、周囲が霧に包まれているからだと少年は思い込むことにした。
/282ページ

最初のコメントを投稿しよう!

215人が本棚に入れています
本棚に追加