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空に充満している淀んだ雲。辺り一面に茂っている木々は風に揺らされ、乾いた音を奏でていた。
少年は瞼を開けていることも辛くなり、左手に握った刀も離してしまいそうだった。
ふいに、金槌のような鈍器で頭を叩き付けられたような感覚が走った。吸っても吸っても息ができず、舌を出して喚く。
苦痛が続くのなら、いっそこのまま眠ってしまおうかと考えたその時……閉じかけの瞳が捉えたものは、前方に見える一つの小さな影。
まだ悪魔が……?
思いを口に出すこともできず、ただ前を見つめる。
段々と近付いてくるそれは、人の形をしているのが分かった。
子供だった。まだ五,六歳程度の、粗末な着物を着た男の子。
悪魔でないことを確認すると、今までの緊張感が一気に解れ、安堵した。
溜め息を不安と共に吐き出すと、自然と呼吸苦も収まる。
それもそのはず、意識がなくなり、赤髪の少年はその場に倒れ込んでしまったのだから。
冷たい地面に顔を埋め、先程の悪魔との戦闘が走馬灯のように蘇ってきた。
自分の血を見たのはいつ振りだろうかと、過去を漁ると同時に教訓を得る。
〝複数の相手には複数で挑め〟
協調性がないのだからチームプレイは無理だろうな、と少年は頭の中でぼやいた。
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